Atelier Bonryu
double slit photography
Atelier Bonryu
double slit photography
ダブルスリット写真_研究室
ダブルスリット写真の原理
縦方向の細いスリットのある板と横方向に細いスリットのある板をピタッと合わせると、一辺がスリットの幅と同じ小さい四角の穴ができます。普通、ピンホールカメラでは円形の穴の開いた板を使うことが多いのですが、四角な穴でも同じことです。これは、まさに、ピンホール写真の項で書いた「アリストテレスの問題」と同じで、穴の形に関わらず投影される像は正しい形になるということです。したがって、当然、この四角い穴の「ピンホールカメラ」を使って写真を撮ることができます。次に、この2枚のスリット板の間隔を離していきます。板を離したとたんに四角い穴のピンホール板はもとの2枚のスリット板に戻って「縦スリットの板」と「横スリットの板」からできた光学装置になります。これをダブルスリット(※)と呼びます。
ダブルスリットを取り付けた一眼レフのE-300
ダブルスリット
※ ダブルスリット
量子力学に関連して「ダブルスリット」というときは、ゾーンプレートの項で干渉現象の説明に用いたように1枚の板に2つのスリットがついているものを指します。このサイトで言う「ダブルスリット」はスリットがある2枚の板のことです。このような使い方は、むしろ、例外的かもしれません。レナーの書籍では、「Slit Imaging」という言葉で「シングルスリット」から「マルチスリット」までいろいろな場合を表しています。しかし、スリットカメラと言う全く別の装置もあります。これはフィルムカメラでフィルム面に近接させて縦スリットを置いてフィルムを高速で流しながら撮影するカメラのことを指します。スリットカメラを用いるとフィルムの流れる方向に時間的に変化している現象をフィルム上に展開できるので、競馬の着順判定等に用いられてきました。また、フィルムの流れる速度をうまく調整すれば、長い列車を(遠近法による)変形なしに撮影することができるし、スリットカメラの原理を使ってパノラマ写真を撮れば回転方向に歪みの全くない写真を撮ることもできます。スリットカメラを発展させて超高速現象を撮影できるようにしたものが「流しカメラ」(Streak Camera)で理工学の研究開発の分野で用いられます。流しカメラは、かっては、フィルムを使うスリットカメラそのものでしたが最近はデジタルカメラをベースにした高性能なものが開発されています。スリットカメラを用いて写真芸術の領域で独特の作品を作る(大関通夫等)ことも出来ます。
参考資料
*大関通夫、残像の美学(日本写真企画、東京、1998)