Atelier Bonryu
zone plate photography
Atelier Bonryu
zone plate photography
ゾーンプレート写真_研究室
ゾーンプレート写真ー注釈6(撮影)
※注6:色収差(Chromatic Aberration)
色収差:ゾーンプレートは、光の波としての性質である回折・干渉という現象を直接利用しているわけですから、焦点に光が集まるかどうかということは光の波長に強く依存します。これは、光学の言葉で言えば、「強い色収差がある」と言うことです。レンズの場合の色収差は、素材となるガラスの屈折率が光の波長によって異なるために起こります。このため、このようなガラスで作ったレンズは光の波長の違いによって焦点距離が異なってくるわけです。一方、ゾーンプレートの場合の色収差はゾーンの間隔と光の波長と回折角度の関係に条件があるために起こります。要するに、レンズの場合とは違って、光の通る媒質の性質ではなく、構造的な理由で色収差が起こります。いずれの場合も、「光の波長が変わると焦点距離が変わってしまう」と言うことなのですが色収差の大きさを定量的にとらえるための取り扱い方が異なってきます。
正弦波と位相
色収差シミュレーション結果との比較:実際にゾーンプレート写真を撮影してみると、上のような条件で求めた波長限界よりも広い波長範囲で良好な写真が撮れるような気がします。少なくとも、上の条件は撮影する上でそれほど厳密な条件ではないように思われます。その理由は、本文で記したように設計波長の光で被写体像の形がはっきりと描写されている時には設計波長から離れた値の波長を持つ光が十分に収束していなくても像の色はかなり再現できているためと思われます。設計波長から外れた波長の光による像の分解能は悪いはずです。そこで、波長550 nm 用に作ったゾーンプレートを使う場合、無限に遠くにある色々な波長の点光源の像がどれほど広がるかについてシミュレーション計算を行ないました。ゾーンプレートは、焦点距離100 mmのものと300 mm のものを使いました。
色収差シミュレーション(1)
波長550 nm用のゾーンプレート(f=100 mm, 17 zones)による波長500 ~ 600 nm の光の像の広がりかた。lamは入射光の波長です。
色収差シミュレーション(2)
波長550 nm用のゾーンプレート(f=300 mm, 65 zones)による波長 540 ~ 560 nm の光の像の広がりかた
これらの図から、17ゾーンの場合には、波長520 nmから580 nmまで、65ゾーンの場合には、波長545 nmから555 nmまでの光は焦点に収束しますがこの範囲を外れると収束しないことがわかります。一方、上で理論的に求めた評価では17ゾーンの場合、518 nmから582 nmまで、65ゾーンの場合、542 nmから558 nmまでの光が収束するということで、これらの結果はおおむね一致していると見ることが出来ます。実際の写真撮影では広い範囲の波長の光がさまざまな分布で混ざっているために被写体によってその効果の程が違ってきます。
例えば、現在私が使っている、波長550 nm用のゾーンプレート(f=300 mm, 65 zones)では、極めて狭い波長範囲の、ほとんど緑色の単色光しか収束しないはずですが、経験的には、このゾーンプレートで撮影した写真から自然の色に近い像を再現することが出来ます。これは、ゾーンプレートの性能としての「色」は単色光の波長と対応させて表現していることやデジタル・カメラではフィルターで3色に分解して記録して、これを合成して画像を再現していること等に関係していると思われます。この点については本文に記してあります。ゾーン数の多いゾーンプレートによる写真で被写体の色がどのようになるかはとても興味ある課題ですが、もう少し検討してみる必要がありそうです。