Atelier Bonryu

infrared photography

 
 
☜注釈目次IR_Photo_R.C.htmlhttp://apple.excite.co.jp/shapeimage_2_link_0

赤外線写真_研究室

赤外線写真ー注釈1


R-1 フィルムによる赤外線写真

当初、 赤外線写真撮影用のフィルムはモノクロ写真用だけでしたが、赤外線カラーフィルムは最初 Kodakから発売され、のちに小西六(コニカ)、イルフォード、ローライなどからも発売されています。赤外線カラーフィルムは、現在は、Kodakおよびコニカの製品は生産が終了していますがイルフォード、ローライのフィルムは生産されています。 なお、Kodakからの発売に際して、赤外線カラー写真の色に対して「False Color(偽色)」という言葉が使われ始めました。「False Color(偽色)」は、写真用語としては「明るさが急激に変化する領域に部分的に現れる偽の色」を差す否定的な意味の言葉でしたが、赤外線写真の「False Color(偽色)」は否定的な意味を持っているわけではなく、むしろFalse Colorによって色彩豊かな写真の世界を作り出すこと目指して肯定的な意味で使います。

一般のカラーフィルムの構造: 赤外線カラーフィルムの構造の説明をする前に、可視光による写真撮影に用いられる一般のカラーフィルムの構造について簡単に説明しておきます。モノクロフィルムもカラーフィルムも、光が当たったときに感光する物質はハロゲン化銀である点は同じです。しかし、モノクロフィルムの場合、感光したハロゲン化銀からできた銀が最終的な像を作るのに対してカラーフィルムの場合、感光したハロゲン化銀は乳剤中の色素分子に置き換わってカラー画像が作られて、最終的には、銀の原子は除去されてしまうという違いがあります。しかし、このような化学変化の過程の詳細は「赤外線カラーフィルムとの比較」という、ここでの問題には関わりありません。ここで重要なのは、光が入射したとき、光の3原色である青、緑、赤の光を吸収する3層構造のフィルムの各層がどのように発色するかということです(第R1−1図)。なお、ネガカラーフィルムもリバーサルフィルムもその構造は同じですが、ネガカラーの場合、入射光の補色が発色するのに対して、リバーサルフィルムの場合、非感光部に対応する入射光の補色が発色しそれらが合わさって入射光と同じ色が発色するようになっています。


この構造をもう少し具体的に書くと、フィルムの最上層、中間層、最下層は、それぞれ、青い光(B)、緑の光(G)、赤い光(R)を感じる層で、現像後に、黄色(Y)、マジェンタ(M)、シアン(C)を発色する色素が混ぜてあります。Y、M、Cは、それぞれ、B、G、Rの補色ですから、このように発色することでカラー写真のネガが出来上がります。これに対して、リバーサルフィルムの場合は、フィルムの構造自体はほぼ同じですが、現像の過程が増えて複雑になり(反転発色現像)、ある層の感光に対してその層以外の2層が発色します。例えば、青い光をあてると最上層(青感層)が感光して現像されたネガフィルムの上では黄色となりますが反転現像したリバーサルフィルムでは中間層がマジェンタ、最下層がシアンに発色して青い色が再現します。なお、基本になる感光材のハロゲン化銀は青色に感光するので中間層と最下層も青色に感光してしまいます。これを避けるために、最上層と中間層の間に黄色フィルター層が置かれていて青い光が中間層と最下層に行かないようになっています。

R1−1図 可視光用の一般のカラーリバーサルフィルムの構造:左の図は感光前の可視光用カラーフィルムの構造で、右の図は感光したフィルムを反転発色現像を行ったのちのフィルムの状態を示しています。この図は、「3原色の光;青(B)、緑(G)、赤(R)(上の矢印)が入射したところでは対応する層が無色透明になるので、現像済みのフィルムを通ってくる光は下の矢印のように、 青(B)、緑(G)、赤(R)になる」ことを示しています。

赤外線カラーフィルムの構造:基本的には、赤外線カラーフィルム一般のカラーフィルムも同じ3層構造を持っています。赤外線カラーフィルムの大きな特徴は、入射光の色と発色の対応関係が一般のカラーフィルムとは違うことです。第R1−2図は、Kodak Ektachrome Infrared AERO Film Type 8443 のような赤外線カラー写真撮影用のリバーサルフィルムの構造を表した図です。このフィルムでは、赤外線、赤、緑に感光する層がこの順に並んでおり、それぞれの層は感光すると、シアン、黄色、マジェンタに発色しますが、反転発色現像したリバーサルフィルムの場合感光した層以外の層が発色するので、最上層、中間層、最下層が、それぞれ、赤外線、赤色光、緑色光を感知すると、黄色とマジェンタ、マジェンタとシアン、シアンと黄色、の発色が起こり、結局、赤(R=Y+M)、青(B=M+C)、緑(G=C+Y)の発色となります。


まとめると、このフィルムは、赤外線、赤、緑の光を感知すると、赤、緑、青を発色するということを示しています。なお、このフィルムで撮影するときは、波長が500 nm程度以下の光を遮断する黄色フィルターをレンズの前につけて青い光を遮断します。

R1−2図 赤外線写真用のカラーリバーサルフィルムの構造:左の図は感光前の赤外線カラーリバーサルフィルムの構造で、右の図は感光したフィルムを反転発色現像を行ったのちのフィルムの状態を示しています。この図は、「3原色の光;青(B)、緑(G)、赤(R)と紫外線(UV)、赤外線(IR)(上の矢印)が入射すると波長の短い青い光(B)及び紫外線は外付け黄色フィルターで遮断され、緑(G)、赤(R)、赤外線(IR)が入射したところでは対応する層(y、m、c)が無色透明になるので、現像済みのフィルムを通ってくる光は下の矢印のように、 青(B)、緑(G)、赤(R)になる」ことを示しています。

展示室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真
研究室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真../atelier_bonryu_g/Pinhole_a.html../atelier_bonryu_g/Zoneplate_a.html../atelier_bonryu_g/Doubleslit_a.html../atelier_bonryu_g/IRPhoto_a.html../atelier_bonryu_g/UVPhoto_a.htmlPinhole.htmlZoneplate.htmlDoubleslit.htmlIR_Photo.htmlUV_Photo.htmlshapeimage_3_link_0shapeimage_3_link_1shapeimage_3_link_2shapeimage_3_link_3shapeimage_3_link_4shapeimage_3_link_5shapeimage_3_link_6shapeimage_3_link_7shapeimage_3_link_8shapeimage_3_link_9

フィルムによる赤外線カラー写真とデジタル赤外線カラー写真の違い:上に述べたように、「赤外線カラーフィルム写真」は3層から構成されていて、波長が 200 nm~900 nm の光を感じるようになっています。実際は黄色の外部フィルターを装着して青い光より短波長の光を取り除いているので最短波長は500 nm程度になっており、3つの層は緑と赤と赤外線を感光するようにしてあります。緑層は550 nm周辺、赤層は650 nm周辺の光を強く感じるようにしてあり、赤外線層は850 nm程度以下広い範囲の光を感じるようになっています。これに対して、「デジタル赤外線カラー写真」の場合、例えば、赤外線透過フィルターとして限界波長が700 nmであるIR700を使ったならば、3つのチャンネルすべてについて感光する光の波長は700 nm以上になります。3つのチャンネルの感度の波長依存性の違いが各チャンネルから出てくる信号の大きさの違いになります。ところで、デジタル赤外線写真のレタッチ法の一つである「赤外線カラーフィルム型フォルスカラー」(注釈7)では、例えば、可視光用デジタル写真の緑チャンネル、可視光用デジタル写真の赤チャンネル、と赤外線デジタル写真の青チャンネル(700 nm以上の波長;実は赤外線チャンネル)の組み合わせで処理を行います。これを、「赤外線カラーフィルム写真」と比べると、「赤外線チャンネル(フィルムの場合の赤外線層)」の担当する波長領域を除いて、よく似ています。このため、このレタッチ法のことを、ここでは「赤外線カラーフィルム型フォルスカラー」と呼んでいます。