Atelier Bonryu

infrared photography

 
 

赤外線写真_研究室

4-2 赤外線レンズレス写真の実際

赤外線ゾーンプレート写真:第4−1節に書いたように、波長550 nm の可視光による写真撮影のために作ったゾーンプレート(焦点距離=150mm、ゾーン数=33、第4−2図)を使って赤外線ゾーンプレート写真を撮影しました(第4−5図)。可視光によるゾーンプレート写真撮影の時の設定波長は、可視光の波長領域(400 nm ~ 700 nm)の中心である550 nm としましたが、赤外線による写真撮影の場合はいくらにすれば良いのかの基準はありません。太陽からの近赤外線の光量は波長が長くなるほど低下しますから、赤外線透過フィルターの限界波長が700 nm程度の場合の設定波長は750 nm ~ 800 nm程度とするのが妥当と思われます。ここでは、赤外線の実効波長が800 nmであるとして計算して、このゾーンプレートの焦点距離は103 mmであるとしました。実際の撮影は、限界波長が700 nmである赤外線透過・可視光遮断フィルターIR70を用いて、ゾーンプレートから撮像面までの距離を90 mm ~ 120 mm程度の間で可変にして行いました。赤外線の実効波長がカメラは赤外線遮断フィルターを取り除いてフルスペクトル化したOlympus OM-D E-M5を使いました。また、比較のために可視光によるゾーンプレート写真の撮影も行いましたが、このために用いたゾーンプレートは、波長550 nmに対して焦点距離100 mmでゾーン数は39の物を用いました(大4−6図)。これによって、上に記した赤外線及び可視光のピンホール写真、赤外線及び可視光のゾーンプレート写真のいずれも撮像面までの距離が100 mm ~110 mm程度となり、ほぼ同じ画角の写真が得られます。

展示室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真
研究室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真../atelier_bonryu_g/Pinhole_a.html../atelier_bonryu_g/Zoneplate_a.html../atelier_bonryu_g/Doubleslit_a.html../atelier_bonryu_g/IRPhoto_a.html../atelier_bonryu_g/UVPhoto_a.htmlPinhole.htmlZoneplate.htmlDoubleslit.htmlIR_Photo.htmlUV_Photo.htmlshapeimage_2_link_0shapeimage_2_link_1shapeimage_2_link_2shapeimage_2_link_3shapeimage_2_link_4shapeimage_2_link_5shapeimage_2_link_6shapeimage_2_link_7shapeimage_2_link_8shapeimage_2_link_9

赤外線ピンホール写真「赤外線ゾーンプレート写真」の撮影を行う前に、「ピンホール+赤外線透過フィルター」の写真撮影を行いましょう。ピンホールの場合、金属板に穴をあけるので第4−1節で記した第一の問題点が完全にクリアされます(可視光に対して不透明な部分は赤外線に対しても完全に不透明である)。カメラ本体は赤外線写真撮影用に改造したOlympus OM-D E-M5を使用しました。ピンホール直径はほぼ0.3 mm、ピンホールから撮像面までの距離は可変で110 mm前後です。光の波長を800 nmとすると、このピンホール直径はほぼ最適直径であることがわかります。第4−3図は、赤外線透過フィルターIR70をこのピンホールの前面につけて撮影した写真で、撮影データは、ISO=1600、シャッター速度=1/13 secです。また、Lab色空間での階調反転法(注釈9)で偽色処理を行いました。鮮明さの点では、当然のことながら、レンズ付きカメラによる写真より劣るのはやむを得ませんが、フォルスカラー処理によって得られた色彩豊かな画像はレンズ付カメラによる赤外線写真の場合と大きな違いはないようです。第4−4図は、赤外線透過フィルターを外して同じ条件で撮影したピンホール写真です。

第4−3図 児童公園から見た茨城県庁ビルの赤外線ピンホール写真。ピンホール直径:0.3 mm、ピンホールから撮像面までの距離:110 mm、カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、フィルター:IR70、シャッター速度:0.002 sec、ISO:200

第4−4図 児童公園から見た茨城県庁ビルの可視光ピンホール写真。ピンホール直径:0.3 mm、ピンホールから撮像面までの距離:110 mm、カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、フィルター:なし、シャッター速度:0.0008 sec、ISO:200

第4−5図 児童公園から見た茨城県庁ビルの赤外線ゾーンプレート写真。波長550 nm に対して焦点距離150 mm(波長800 nm に対して焦点距離 103 mm)、ゾーンプレートから撮像面までの距離:110 mm、カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、フィルター:IR70、シャッター速度:0.01 sec、ISO:1000

第4−6図 児童公園から見た茨城県庁ビルの可視光ゾーンプレート写真。波長550 nm に対して焦点距離100 mm、ゾーンプレートから撮像面までの距離:100 mm、カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、フィルター:なし、シャッター速度:0.008 sec、ISO:400

参考のため、レンズを通して撮影した赤外線写真(第4−7図)と可視光写真(第4−8図)を下に載せておきます。

第4−7図 児童公園から見た茨城県庁ビルの赤外線写真(レンズ付きカメラ)。カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、レンズ:Zuiko Digital 12-50 3.5-6.3、フィルター:IR70、シャッター速度:0.002 sec、ISO:200

第4−8図 児童公園から見た茨城県庁ビルの可視光写真(レンズ付きカメラ)。カメラ:Olympus OM-D E-M5 fs、レンズ: Zuiko Digital 12-50 3.5-6.3、 フィルター:なし、シャッター速度:0.0008 sec、ISO:200