Atelier Bonryu

zone plate photography

 
 

ゾーンプレート写真_研究室

ゾーンプレート写真の原理ー光の回折・干渉

光は回折・干渉する:このようなゾーンプレートでどうして映像が投影されるのか簡単に説明しようと思います。上に書いたように、ゾーンプレートは光の「屈折現象」も「反射現象」も使っていません。使っているのは、「波としての光」が持っている「回折」と「干渉」という性質です。下の左のアニメーションは、左下方向から平行に進んできた水の波が壁(黄色の板)に開けられた細いスリットを通り抜けると円形に広がっていく様子を表しています。このように、波が壁で隠された裏側にも回っていく現象を「回折」と言います。光が波であるならば、光もこのように進むのでしょうか?実は、回折の起こりやすさには条件があります。波の波長が考えているシステムのマクロなサイズ(スリット幅等)に比べて小さすぎると回折される波の量は少なくなります。下の右のアニメーションは波長に比べて大きな幅のスリット(スリットの図は省略してあります)を通過した水の波の動きを示しています。まっすぐ前方に進む波が多くて回折される波が少ないことがわかります。光の波の場合は、はるかに波長が短いですから、もっと極端で、ほとんどの光は前方に進んで(直進して)ごく僅かの光が回折されるのです。ゾーンプレートはこの僅かに回折された光を利用するのです。

回折・干渉現象を利用する:この回折現象をうまく使えば直線的に進んでくる光線だけでなく隙間のところで曲がってくる光線も利用できるので明るい光学素子を作ることができます。しかし、いろいろな方向から来る光をむやみに集めてもレンズのように像は結びません。そこで、光の「干渉」という現象を用いるのです(実は、回折自体が既に干渉現象の効果も含んでいるのですが分かりやすくするためにここではわけて考えましょう:フレネル回折)。光は波ですから、時間とともにその強さはプラス(山)になったりマイナス(谷)になったりします。ある点で見ているとき、ある方向から来た光の波がプラスになり別の方向から来た光の波がマイナスになるとこれらの波は打ち消しあって小さくなってしまいます。もし、これらの光が両方ともプラス、あるいは両方ともマイナスならば強めあって強い光の波になります。これが、光の「干渉」なのです。上の右のアニメーションは同じ一つのスリットを通る波について「干渉」の効果を入れて計算して直進と回折が見えるようにした図なのですが、「干渉」の効果がはっきりわかるように2つのスリットを通った水の波の振る舞いを示したものが下の左のアニメーションです。壁に開いた二つのスリットを通った水の波がそれぞれ円形に広がって行くけれど干渉を起こして波の強さに強弱が生じている様子を見ることが出来ます。

図1:水の波の回折

 波長に比べてそれほど広くない幅のスリットを通り抜けた水の波は丸く広がっていきます。

図2:水の波の回折

 波長に比べて十分大きな幅のスリットを通り抜けた水の波はほとんど前方に進み僅かの波が横に進みます。

ゾーンプレートのシミュレーション:この現象をうまく利用したのがゾーンプレートなのです。中心の透明部分を通った光がセンサー(感光面)に当たる位置(焦点)では、ほかの全ての透明ゾーンを通ってきた光が皆強めあうように、透明ゾーンの半径を決めてあります。このようにすると、レンズを使った場合と同じように感光面上に被写体の像を作ることができるのです。光の波の動きを3次元的に見せるのは難しいので、(ゾーンプレートの中心と焦点を結ぶ)光軸を含む平面上(XZ平面上)で光の波の強さがどのように変化するかを計算した結果を図4に示します。私たちがゾーンプレート写真を撮る場合には光の波長が550 nm程度に対して焦点距離は数10 mmから数100 mm程度なので、焦点距離と波長の比は百万倍程度にもなり干渉の効果がはっきりわかる図を描くのは難しいですから、図4は波長を1.0、焦点距離を90.0としてゾーン数5のゾーンプレートについて計算してあります。この場合、ゾーンプレートの半径は16程度になりますが光は焦点面上の半径2.0程度の円形領域の中に収束していることがわかります(図5,図6)。図5は焦点面(ゾーンプレートから距離90.0 だけ離れた面)上の光の分布を示すもので、図6はその面の中でx軸に沿っての光の強度の変化を表しています。図5で中心近くの赤い部分の形が方形に見えますが、これは計算メッシュの数が足りないためで、メッシュ数を増やせば円形になります。また、図6では中心のピークしか見えないのに図5では同心円状に光の強いところと弱いところが見えます。これは図5では光の強度を対数で表して強度の弱い部分の構造がはっきりわかるようにしてあるためです。中心の周りに同心円状に光が分布することは図4からも想像できます。

図3:水の波の干渉

 2つのスリットを通過して円形に広がる水の波が干渉して波の強さに強弱が出ています。

図4:ゾーンプレートによる光の収束

 左から来た光の波はゾーンプレートを通過した後、焦点の近くで振幅が大きくなる。赤黒い所は光の強度が大きくなっています。

ところで、波長が1.0で焦点距離が 50.0ということは現実的にはどのような状態を意味するでしょうか?普通、ゾーンプレートは波長550 nm (0.00055 mm) の光に対して設計しますから、ここで計算したゾーンプレートの焦点距離 50.0 と言うのは、50.0(0.00055/1) mm = 0.0275 mm で、この場合、ゾーン数 5 のゾーンプレートを使っていますのでゾーンプレートの半径(最大透明ゾーンの外側の半径)は 0.01738 mm になり、光の収束する円形領域の半径は 0.001 mm 程度になります。恐ろしく小さなシステムですが、このようなシステムを作って実験するならば、上の図と同様な結果が得られるはずです。

図5:焦点面での光の強度分布

 ゾーンプレートを通過した光は焦点に収束し、焦点面ではその周りに同心円状に変化する分布をします。

図6:焦点面での光の強度分布

 左の図でx軸に沿う光の強度分布を表します。左の図では対数スケールで強度を表しているのでごく小さな変化が見えますが、この図は線形スケールなのでほとんど見えません。

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