Atelier Bonryu

pinhole photography

 
 

ピンホール写真_研究室

ピンホール写真の歴史ー墨子とアリストテレス

墨子とアリストテレス:ピンホール現象について文字による記録はいつごろからあるのでしょう?

                 ⇨

 アリストテレスは、日食のときにプラタナスの葉が重なり合ってできる隙間を通ってきた光によってピンホール現象が観測されることを記している。

 西洋諸国については、紀元前4世紀のアリストテレス(Αριστοτέλης、Aristotles、B.C. 384 - 322)による記述がピンホール現象についての文字による最古の記録であるとされています。日食のときに、木漏れ日によって地上に投影される太陽の像について述べているのがその記録です。アリストテレスは「プラタナスあるいは他の広葉樹」と記していますが、適度に茂った広葉樹の下から空を見上げると重なり合った葉の隙間が多数の「ピンホール」となって日食のときの太陽の像を多数地面に投影する様子が想像できます。この様子は上の挿絵のように見える筈ですが、実際の写真を見ようと思うならば、Wikimedia Commonsのサイトに入ってキーワードを「solar eclipse」として検索するとアリストテレスが見たに違いない「日食の像」と同様の多数の写真を見ることができます。この時、光が通ってくる小穴がどのような形をしていようが「被写体」の形が正しく投影されるのはなぜかということが「アリストテレスの問題」(※注1)として提起されて、ルネッサンス期にマウロリコ(Francesco Maurolico, Franciscus Maurolycus:1494 - 1575)やケプラー(Johannes Kepler: 1571.12.27 - 1630.11.15)によって解答が与えられるまでの長い間未解決問題として残されていました。実際、木漏れ日が通過する木の葉の隙間はいろいろな複雑な形をしているのに、地面には、上の挿絵に見られるように、日食によって三日月型になった太陽の像が投影されますね。


 一方、東洋においては、アリストテレスより早く、紀元前5世紀には既にピンホール現象について知られていたことの記録があります。これは、中国春秋戦国時代の思想家の墨子(Mozi, 墨翟、Mo Ti, Mo Di:450 ? - 390 ?)の著書である「経、経説」にある記述をさしています(※注2)。なお、「墨子」と言う時、墨子その人をさす場合と墨子およびその弟子達による著作物をさす場合がありますが、混乱することもないと思いますので特に区別いたしません。 経、経説(各上下)は現存する著作物53篇のうちの4篇で、この4篇が理工学的な内容を持っています。実際、この部分には、ピンホール現象のような光学の知識だけでなく古典物理学に関する広い範囲の知識が含まれています。これらの内容はジョセフ・ニーダム(Joseph Needham:1900 - 1995)の著書(中国の科学と文明)によって20世紀の半ばには広く世界中に知られるようになりました。ところで、 経、経説の記述はきわめて簡潔であるばかりでなく長い年月に亘って伝えられてくる途中で誤記等も生じたためにとても難解でその内容を正しく読み取ることは容易ではありません。しかし、今までに行われた研究の結果、墨子がピンホール現象についてあるレベルの理解に達していたことは間違いないとされています。興味深いのは、ピンホール現象によって生じる「像が倒立する」ことの解釈についてです。 経、経説の記述から墨子は像が倒立する理由を正しく理解していたことがわかりますが、アリストテレスはその理由を明らかにできなかったので西洋ではこの問題の解決もルネッサンス期のレオナルド・ダ・ヴィンチ(Leonardo di ser Piero da Vinci、Leonardo da Vinci:1452 - 1519)の登場を待たなければなりませんでした。

展示室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真
研究室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真../atelier_bonryu_g/Pinhole_a.html../atelier_bonryu_g/Zoneplate_a.html../atelier_bonryu_g/Doubleslit_a.html../atelier_bonryu_g/IRPhoto_a.html../atelier_bonryu_g/UVPhoto_a.htmlPinhole.htmlZoneplate.htmlDoubleslit.htmlIR_Photo.htmlUV_Photo.htmlshapeimage_2_link_0shapeimage_2_link_1shapeimage_2_link_2shapeimage_2_link_3shapeimage_2_link_4shapeimage_2_link_5shapeimage_2_link_6shapeimage_2_link_7shapeimage_2_link_8shapeimage_2_link_9