Atelier Bonryu

zone plate photography

 
 

ゾーンプレート写真_研究室

ゾーンプレート写真の撮影ー背景光、ハロー、かぶり

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 ゾーンプレート写真においては「背景光」が非常に重要な働きをしているのでこれを適切に取り去ると鮮明な写真が出来上がることを示しました。この背景光についてもう少し詳しく考えてみます。背景光についての定量的な話は煩雑になるので注釈のところにまとめておきます(※注5) なお、「背景光」という語は、通常、対象とする被写体以外からの光を指す場合が多いと思いますが、ここでは、上に記したように、ゾーンプレート通過後に主焦点に収束しない光を表していることに注意してください。また、この背景光を、対象とする被写体からの光による「ハロー」と対象とする被写体以外の「背景からの光」に分けて考えます。 ここでは、図を使って、ハローと「背景からの光」による「かぶり」についてまとめておきたいと思います。「ゾーンプレート・カメラ」において像を作るのは、ゾーンのところで回折してきた光ですが、ゾーンのところで曲がらずに直進する光も沢山あります。被写体上の同じ点から出た光であっても必ずしも干渉する訳ではありません。干渉を起こすには光の位相がそろっている(光の波の山や谷がそろっている)必要があります。このように位相がそろった状態をコヒーレント(coherent:可干渉)であると言います。ここで述べたコヒーレントでない光が像面で「背景光」となるわけです。この様子を表したものが次の図です。

被写体ハローと背景からの光による「かぶり」

 被写体上の1点から出た光は、透明ゾーンのところで回折し、ゾーンプレートの中心を通る直線が像面と交わるところに収束します。この光によって、(a)図の右のように濃い緑の被写体像が出来ます。一方、ゾーンのところで回折せずに直進してきた光は被写体像の周りにハローを作ります(薄い緑)。(a)図の点線に沿って像面上の明るさの変化を示したのが(b,c)図です。(b)図はレンズ付きカメラで撮影した場合で、(c)図はゾーンプレートカメラで撮影した場合です。ゾーンプレートで撮影すると、被写体からの光によるハローと背景からの光による「かぶり」(背景光)が発生します。前ページではこの背景からの光による「かぶり」を取り除いて「ゾーンプレート写真を鮮明にする」方法を述べました。

(b)

(c)

 ところで、ハローの大きさと明るさはどのようになるのでしょうか?これについても、注釈(※注5)にもう少し詳しい話を書いておきましたが、直感的には次の図を見ればよくわかると思います。以下の議論では、センサー面上(モニター上あるいはプリント上ではありません)でのサイズで考えてください。被写体である光源のサイズを考える時には、それはセンサー面上の像のサイズのことです。私の使用しているデジタル一眼レフカメラは「フォーサーズ」という規格ですので、センサーの大きさは縦 17 mm、横 13 mm程度です。普通、被写体からゾーンプレートまでの距離とゾーンプレートからセンサーまでの距離を比べると、ゾーンプレートからセンサーまでの距離の方が遥かに短いですから、回折と干渉によって光が収束したセンサー上の点から最外透明ゾーンを通って回折しないで直進してきた光がセンサーに当たる点までの距離は最外透明ゾーンの半径とほぼ同じです。このことから、ハローの幅はセンサー面上でだいたい最外透明ゾーンの半径になることがわかります。また、ハローの明るさは被写体上の各点から出た光が収束した各点の周りに投影された光を加えあわせたものですから、被写体像が小さい時には相対的に暗くて被写体像の大きさがゾーンプレートの大きさ程度になるまで増加して、それ以後は被写体の大きさに拘わらず一定となります。この状況は次の図に示す通りです。

被写体像の大きさとハローの明るさの関係

 左から右に行くにつれて被写体像の大きさが大きくなります。被写体像の大きさがゾーンプレートの大きさ程度になるまではハローの明るさは増加しますがそれ以後は被写体がいくら大きくなってもほぼ同じ明るさになります。この「被写体」周辺の背景の像の「ハロー」(背景光)は写真全体をぼんやりさせる「かぶり」になります。

ところで、このハローとゾーンプレート写真の鮮明さの関係について実際の写真を使って説明してみます。使った写真は、焦点距離55 mm用に最適化したピンホール写真と、焦点距離55 mmのゾーンプレート写真、および焦点距離300 mmのゾーンプレート写真です。焦点距離55 mmの写真は、ゾーンプレート写真をシャープにする方法を述べる時に使ったものでコンフリーの花を撮影したものです。ゾーンの数は29です。また、焦点距離300 mmのゾーンプレートのゾーン数は65で月を撮影しました。この程度のゾーンプレートでは、残念ながら、月のクレーターまでは写りませんが、「兎の模様」は見ることが出来ます。

ピンホール写真

 左の写真は比較のために撮影したピンホール写真です。右の上の方に小さな白丸がありますが、これがセンサー面上でのピンホールの大きさを示しています。ピンホールの大きさは、焦点距離55 mmに最適化してあります。葉脈等を見ると、このピンホールの大きさ程度の分解能が達成されていることがわかります。

ゾーンプレート写真(f=55 mm)

 上の二枚の写真は焦点距離55 mm、ゾーン数29のゾーンプレートで撮影したコンフリーの写真です。センサー面上でのゾーンプレートの大きさは写真の右上に示してあります。

 左上の写真は撮影したままのものです。 

 右上の写真はレベル調整をして「背景からの光」の「かぶり」を取り除いたものです。中心ゾーンの円は上のピンホールと同じですが、葉脈や花の輪郭を見ると、明らかにピンホール写真よりも分解能が高いことがわかります。


 右の写真はレベル調整をした後にHDR処理をしたもので、葉脈や花の構造が一層はっきりと見えます。

ゾーンプレート写真(f=300 mm)

 左の写真は、焦点距離300 mm、ゾーン数65のゾーンプレートで撮影した月です。センサー面上でのゾーンプレートの大きさを右下に示してあります。ハローの幅はほぼ最外ゾーンの半径に等しいことがわかります。中心ゾーンの円の大きさよりも小さな構造まで撮影できることがわかります。

 このような撮影例からもわかるように、ゾーンプレートによってかなり細かい情報を含んだ写真を撮影することが可能です。また、ゾーンプレート写真が非常にソフトに見える大きな原因である「背景からの光によるかぶり」はかなりの程度まで取り去ることが可能です。さらに、このようにして「かぶり」を除去した写真にも被写体周辺のハローは残っていてゾーンプレート写真らしさは失っていません。ピンホール写真に比べて、調整出来るパラメータの数は極めて多いですから工夫次第で色々と面白い写真が撮影できると思われます。例えば、焦点距離やゾーン数を変えるのは最も単純な変更ですが、フレネル型(2値型)ゾーンプレートにするかガボール型(連続値型)ゾーンプレートにするかという選択もありますし、ゾーンを多数の穴で置き換えたフォトン・シーブにしたり、色収差を抑えたフラクタル・ゾーンプレートという可能性もあります。

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(a)

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