Atelier Bonryu
zone plate photography
ゾーンプレート写真＿研究室
ゾーンプレート写真の撮影ーソフトでシャープな写真
ゾーンプレート写真の解像力とコントラスト：ゾーンプレート写真撮影の経験のある人に「ゾーンプレート写真の特徴は何ですか」と聞くと、多くの場合、「ピンホール写真よりもさらにソフトな写真が撮れることです」という答えが返ってきます。一方、科学技術分野での応用を考える時のゾーンプレート写真の特徴としては、もちろん、入射光量が多くてピンホール写真よりも明るい写真が撮れるということが大切ですが、「分解能が高くてピンホール写真よりもシャープな写真が撮れる」ことも重要です。でも、この二つの答えは矛盾しているような感じがします。しかし、これらは矛盾してはいないのです。簡単に説明すると次のようになります。
ゾーンプレート写真が、「とてもソフトに見える」ことの理由は、（１）背景光、（２）色収差、の二つであると考えられます。ここでは、これらについて簡単に説明しようと思います。詳しい説明は、やや専門的になるので、それぞれ、※注５と※注６にまとめてあります。ゾーンプレートはピンホールと違って焦点距離がきちんと決まっていますから、長焦点や大ゾーン数のゾーンプレートを使った場合にはピントが外れてぼけた写真が撮れることがありますが、これは距離合わせを正しく行えば避けることができます。
背景光（※注５）：ゾーンプレートに入射した光の行方を考えます。中心の光軸にそって進む光はそのまま焦点（主焦点）に達しますが、中心を外れたゾーンに入射した光の一部は回折効果で焦点に向かい、一方、大部分は真っすぐ進んで無限の遠方に向かいます。また、主焦点とは違う方向に向かって第２、第３の焦点に集まります（レンズの場合と異なり、フレネル・ゾーンプレートには主焦点以外に沢山の副焦点があることが特徴ですが、ここでは、これについてはこれ以上述べません）。何れにせよ、主焦点に集まる光の量は全体の約1/10に過ぎません。この光以外が背景光で写真のコントラストを低下させる原因になっています。注意しなければいけないのは、ここでは完全にコヒーレント（coherent：位相がそろっていてお互い干渉できる）な光を考えている事です。自然光が完全にコヒーレントではあり得ませんから、実際の撮影ではさらに多くの光が直進して、焦点に集まる光量の割合もさらに少なくなります。このような事は、レンズやピンホールでは考える必要はなくてゾーンプレート特有の現象です。
ここまでの話から、ゾーンプレート写真はピンホール写真の一般化と考えることができるかもしれません。ゾーンプレート写真は光の回折現象を積極的に使っているのに対してピンホール写真では回折現象の事をほとんど考える必要がありません。むしろ回折現象をさける事を考える必要があります。実際、ピンホール写真でシャープな写真を撮ろうと思ったら回折現象について考えなければならなくて、これを追求していくとゾーンプレート写真に行き着くわけです。解像力が最も大きくなるようにピンホール直径を最適化すると、その直径はゾーン数Ｎが１である正のゾーンプレートの直径と一致します。したがって、直径を最適化したピンホールはゾーンプレートの特別な場合（Ｎ=1のゾーンプレート）であると考えることが出来ます。
ところで、回折現象を積極的に利用した結果、ゾーン数が１よりも大きなゾーンプレートの写真はピンホール写真にはなかったいくつかの特徴を持っています。それは、「解像力とコントラスト」あるいは「色収差」と言う形で現れてきますので、ここでは、これらの課題について記すことにします。
