Atelier Bonryu

infrared photography

 
 

赤外線写真_研究室

III. フォルスカラー(偽色)赤外線写真


3-1 赤外線写真の後処理

繰り返しになりますが、赤外線には色がありませんから、そのままでは人間の目に見えるカラー写真にはなりません。CCDやCMOSが感じるのは光の強弱だけです。そこで、デジタルカメラで撮影された赤外線画像は(一応カメラ自身や設定条件に依存した色は付いていますが)人工的に色(擬似カラー、偽色:false color)をつけるかモノクロ写真に加工するという後処理が必要になります。ここでは、この課題について簡単に記します。ここでは、まず、デジタルカメラで撮影されたカラー画像について考えることから始めます。

デジタルカメラの画像:CCDとかCMOSといったデジタルカメラのセンサーは光の強さだけを感じているのであって色の違いまで感じているわけではありません。レンズを通ってきた光はフィルターで赤、緑、青チャンネルの光に分けられて、それぞれの光の強さだけが記録されます。簡単に言ってしまえば、1枚のカラー写真を撮るということは、実は、赤、緑、青のフィルターを通ってきたそれぞれの光に対応する被写体の像(形)を写した3枚の「(モノクロ)写真」を撮っていることに相当します。赤(R: Red)、緑(G: Green)、青(B: Blue)は光の三原色ですから、これらの光で表された像を合成することで元の自然な色の像が再現できます。この3枚の「写真」のことをRチャンネル、Gチャンネル、Bチャンネルの像と言います。センサー感度と各チャンネルの信号の関係については注釈5にまとめてあります。通常のデジタルカメラは、この三原色の信号を再合成してカラー写真を出力するようになっています。


このように、デジタルカメラで撮影した写真は、上に記したような三原色信号を経由しないでモノクロ写真を出力する特別なカメラで撮った写真以外はカラー写真ですから、モノクロ写真を必要とする場合には、後処理によってモノクロ化する必要があります。これは、赤外線写真だけでなく可視光写真でも同様です。このホームページでは、現在、赤外線モノクロ写真はあまり扱っていませんが、カラー写真をモノクロ写真にする方法に関しては注釈6に簡単に記しておきます。

赤外線写真の後処理:赤外線写真を撮影した場合でも、上に記した赤、緑、青の光を記録するためのセンサー素子で光の強弱が記録されますが、これらはセンサー前面の赤用、緑用、青用のフィルターを通ってきた赤外線の強弱を表しているのであって赤色、緑色、青色に対応する波長の光の強さを表しているのではありません。ですから、赤外線写真を撮影した時にカメラから出てきた画像に色が付いていたとしてもそれが赤外線の色ではないのです。そもそも赤外線は見えないし、当然、(私たちの認識できる)色はないはずですから。赤外線写真を撮影したときにデジタルカメラから得られる写真の色は、デジタルカメラ自身やその設定によっていろいろ変わりますが、多くの場合、茶色がかった赤っぽい色をしています(これも偽色の一つです)。赤外線の波長は緑や青よりも赤に近いですからRチャンネルに最も強く記録されているためでしょう。可視光の場合、R,G,Bチャンネルの像を重ね合わせると元の自然な色の被写体が得られますが、赤外線写真の場合は各チャンネルの像が「何色」を表しているか言えませんし、合成した写真の色がどうであるべきかということも言えないわけです。そこで、これらのチャンネルに可視光撮影の際の割り当てには捕らわれずに色を割り当てて写真を完成させます。このようにして仕上げた赤外線カラー写真を「フォルスカラー(false color、偽色)赤外線写真(False Color Infrared Photograph)」といいます。フォルスカラー処理はフォトレタッチ(後処、post processing)の一種と考えることができますが、R,G,Bチャンネルそれぞれ丸ごと色相、彩度、明度を変更したり、チャンネル同士を交換したり、あるいは、RGB色空間から別の色空間に移って同様の操作を行ったりすることが中心となっており、可視光の写真でよく行われるレタッチと比べるとかなり特色のある操作となっています。

展示室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真
研究室 ピンホール写真 ゾーンプレート写真 ダブルスリット写真 赤外線写真 紫外線写真../atelier_bonryu_g/Pinhole_a.html../atelier_bonryu_g/Zoneplate_a.html../atelier_bonryu_g/Doubleslit_a.html../atelier_bonryu_g/IRPhoto_a.html../atelier_bonryu_g/UVPhoto_a.htmlPinhole.htmlZoneplate.htmlDoubleslit.htmlIR_Photo.htmlUV_Photo.htmlshapeimage_3_link_0shapeimage_3_link_1shapeimage_3_link_2shapeimage_3_link_3shapeimage_3_link_4shapeimage_3_link_5shapeimage_3_link_6shapeimage_3_link_7shapeimage_3_link_8shapeimage_3_link_9

フォルスカラー(false color、偽色)赤外線写真:撮影された赤外線写真に後処理を施して、フォルスカラー赤外線写真を仕上げる最も基本的な方法として次の2つがあります。


まず第一は、いわば、「赤外線カラーフィルム型フォルスカラー」と言えるもので、同じ被写体を撮った赤外線写真と可視光写真の2枚を合成する方法です。もう一つは、いわば、「色相交換型フォルスカラー」と言えるもので、 赤外線写真1枚だけを使って擬似カラー赤外線写真を仕上げる方法です。これらについては、第3−3節で詳しく説明します。

本ホームページの記事を基にして赤外線写真について解説した電子書籍を出版しました。特に、フォルスカラー処理について詳しく説明してあります。ご一読ください。