Atelier Bonryu
zone plate photography
Atelier Bonryu
zone plate photography
ゾーンプレート写真_研究室
ゾーンプレート写真の原理ーピント合わせと被写界深度
ゾーンプレートのピント合わせ:例えば、デジタル一眼レフ・カメラにゾーンプレートを装着して写真撮影をする場合を考えてみます。ゾーンプレートはピンホールに比べるとはるかに明るいのですが、ファインダーを見てピントを合わせるには充分な明るさがあるとは言えません。そこで、ピントの合う位置をあらかじめ計算しておいて、ゾーンプレートの位置をあわせるというのが標準的な方法になります。
ところで、まず、無限遠にある点光源の像を考えてみます。この場合、点光源の像は焦点の位置にできます。ですから、この場合にはゾーンプレートと感光面の間の距離は焦点距離と一致します。この距離にどの程度の誤差が許されるのか考えてみます。これは、無限遠にある被写体に対する「焦点深度」(※注4)です。これを被写体側の許容範囲に置き換えると「被写界深度」になります。焦点深度も被写界深度も、許される誤差の大きさの基準(どの程度の「像のボケ」まで許すかという事)については目的に応じて与えなければなりませんから、装置によって色々な基準が採用されます。
カメラの場合、普通、その基準は、ピントのずれによって円形に広がった「点光源の像」の最大許容直径(許容錯乱円直径)で与えます。また、この許容錯乱円直径は、通常、カメラの像面の対角線の長さをある定数(1500程度)で割ったもので定義します。私の使用しているフォーサーズ規格のカメラの像面の対角線の長さは21.63 mmですので許容錯乱円直径は0.015 mm程度になります。ところで、ゾーンプレートの場合、ゾーン数を大幅に増やせば別ですが、標準的なゾーン数・焦点距離ではゾーンプレート固有のボケの半径はこの許容錯乱円の半径と同程度あるいはそれ以上になってしまいます(例えば、焦点距離100 mm、25ゾーンで0.06 mm程度:※注5)。したがって、レンズ付きカメラについての焦点深度や被写界深度の定義と同じ定義では余り意味がありません。そこで、ゾーンプレートの場合、最外側ゾーンからの光が中心ゾーンからの光を完全に打ち消してしまう位置と焦点の間の距離を「焦点距離の許容誤差」として、焦点深度や被写界深度を定義しています。分解能を上げるために透明ゾーンを一つ増やしてもその効果が効かなくなる限界を示しています。ゾーンプレートによって投影された像の鮮明さを表す基準になりますが、レンズ付きカメラの焦点深度や被写界深度と直接比較することは出来ませんのでご注意下さい。
無限遠の点光源に対する焦点深度(レンズ)
有限距離にある点光源に対する焦点深度
有限の距離(-a)に置かれた点光源に対する像の位置(b)の許容範囲。
距離を無限遠に合わせた時の被写界深度
有限距離に設定した時の被写界深度
被写界深度計算の具体例:実際の撮影に際して、被写界深度はどの程度であるかは大変興味ある話題です。この数値を求めるには、ゾーンプレートから被写体までの距離、ゾーンプレートの焦点距離、およびゾーン数を上にある式に代入して計算すればよいのですが、ここでは、一般的な傾向を知るために無限遠に合わせたゾーンプレートを使ったときに具体的にどれぐらい近くまでピントが合うかを求めてみます。
無限遠の点光源に対する焦点深度(ゾーンプレート)
ゾーンプレートの場合、焦点深度は、普通は、ゾーン数Mのゾーンプレートが作る像の半径がゾーン数M−1のプレートの作る像の半径に一致する位置で決まるように定義してあります。